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自分の好きなこと、特にハロプロ関連の話題とテレビ番組の感想について多く書いています。
新説「北野武劇場」―北野映画初のラブストーリー―
第3作目『あの夏、いちばん静かな海。』は、
前作『3-4X10月』の公開から約1年後の1991年10月に公開されました。

この作品から、北野監督の所属事務所であるオフィス北野が映画製作に乗り出し、
それ以後の北野映画にオフィス北野は深く関わりあっていくことになります。

『あの夏、いちばん静かな海。』は、北野映画として初めての恋愛映画であり、
たけしさんが出演しない初めての北野映画でした。
これだけでもそれまでの2作品とはだいぶ色合いの違った作品だったわけですが、
さらにこの作品では題材としてサーフィンが描かれており、
『あの夏、いちばん静かな海。』は
人々が抱いてきた北野武(ビートたけし)像から大きく外れた作品だといえました。

しかしながら、それまでの2作品と共通するというか、
それまでの2作品の特徴をより深めた作品と見ることもできます。
その共通するものとは、作品全体の静けさ、台詞の少なさです。
真木蔵人さん演じる茂と大島弘子さん演じる茂の彼女・貴子は聾唖者です。
つまり耳が聞こえないわけです。
必然的に台詞は少なくなり、静かな作品となりました。

劇中には恋愛映画なのに「好き」とか「愛してる」が登場しないわけですが、
それこそが説明台詞を嫌う北野監督ならではの"らしい"演出なわけです。
台詞ではなく映像で訴えかけるのです。
たとえば、バスにサーフボードは乗せられないからと茂が歩いて帰り、貴子はバスで帰る場面で、
貴子は途中でバスを降りて茂に会うため来た道を引き返します。
そして再び会った2人は抱きしめ合うのではなく、ただじっと見つめ合い、それから2人で歩き出すのです。
言葉なんていらない、過剰な愛情表現なんていらない、と思わされるシークエンスです。

この作品ではサーフィンが題材となっています。
別に北野監督はサーフィンをやっていたわけではないのですが、サーフィンを題材にした映画を撮ったわけです。
ともすれば、サーフィンの描き方が未熟になり、作品全体の出来を損なってしまう恐れがあるわけですが、
そういった点を北野監督は見事にクリアしました。
『北野武劇場』に出演した際に主演の真木さんは、
北野監督はサーファーの精神的な面や
サーフィンの素晴らしさを「アンダースタンド(理解)」してくれたと語っていました。
真木さんはサーフィンに造詣が深いわけですが、
そういった方が認めてしまうくらい北野監督はサーフィンをしっかりと描いたわけです。
だからこそ観客はこの映画の世界に自然にスッと入り込めるのです。

映画評論家の淀川長治さんはこの映画を、
「あのね、日本の映画の歴史の中でね、一番言いたいくらいあの映画好きなのね。」と称賛しました。
淀川さんはこの映画の「サイレント」な部分を特に評価したわけですが、
これはまさに北野監督の望んだ評価だったのではないでしょうか。
この映画も興行的には奮わなかったわけですが、
一部では北野映画の静けさ、つまり「サイレント」な部分が確実に受け入れられ始めていたのです。



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