今回は東直己著『逢いに来た男』について書いていきたいと思います。
内容
街の片隅のラーメン屋『龍庵』に、
出前持ちとして雇われた「おいちゃん」。
禿頭と立派な白いヒゲをたくわえ、
片言の日本語を話す彼の正体は・・・・・(「梅雨時雨」)。
ススキノの娼婦・美代子は、
大学生の龍彦から想いを寄せられ、心揺れていた。
そんななか、
娼婦仲間の君代の店で目にした男の姿が気になって・・・・・・(「逢いに来た男」)。
他、全六篇を収録。
札幌の街を舞台にした、不思議な酪酊感をもたらす短編集。
(単行本『死ねば いなくなる』を改題)
感想
この短編集に収録された作品はどれもが一風変わっています。
『世にも奇妙な物語』に登場しそうな話と言うとピンとくるかもしれません。
この短編集に収録された作品は、
著者である東直己さんがプロデビューする前に書いたもので、
習作ともいうべき作品たちであるわけです。
ゆえに今の東直己さんの作品に比べると完成度が…などと思う方がいるかもしれませんが、
自分なんかはプロデビュー前にここまでの作品を仕上げていたという事に驚いてしまいます。
ここに収録された六篇の中で特に印象に残ったのは「ビデオ・ギャル」です。
かなりアダルトな表現が多数登場する作品のため読む人を選ぶ感じがしますが、
時空が歪んでいくというか、次々と設定が変わっていく不思議な作品で、
ちょっとアダルトな表現を我慢してでも読んでもらいたい作品です。
この作品を読んで自分が思い出したのが、北野武監督の映画『TAKESHIS'』です。
この映画は、夢なのか現実なのか観ているうちに分からなくなり、
鑑賞後に非常に不思議な感覚にさせられた映画でした。
この時の感覚とこの作品の読後感が非常に似ていたのです。
『TAKESHIS'』は賛否両論を巻き起こした映画でしたが、
自分は決して嫌いな映画ではありませんでした。
だからこそこの「ビデオ・ギャル」という作品に惹かれたのでしょうね。
スポンサーサイト
| ホーム |