今回は岡部えつ著『嘘を愛する女』について書いていきたいと思います。
内容
大手食品メーカーに勤める由加利は、
研究医で優しい恋人・桔平と同棲5年目を迎えていた。
ある日、桔平が倒れて意識不明になると、
彼の職業はおろか名前すら、
すべてが偽りのものだったことが判明する。
「あなたはいったい誰?」
由加利は唯一の手がかりとなる桔平の書きかけの小説を携え、
彼の正体を探る旅に出る。
彼はなぜ素性を隠し、彼女を騙していたのか。
すべてを失った果てに知る真実の愛とは―。
長澤まさみ、高橋一生 共演で話題の映画『嘘愛』を完全小説化。
小説で明かされるもうひとつの真実とは――。
感想
嘘をつくことは悪い事だとされます。
この物語の主人公である川原由加利もまた嘘は悪い事だと断じ、
自分の恋人である小出桔平が
なぜ自分に対して嘘を付いていたのかを突き止めようとします。
そんな彼女の行動を止めようとするのは、
彼女に雇われた私立探偵・海原でした。
海原は自分の過去を持ち出して、以下のようなセリフを言います。
「そうですよ。
でも、十年以上も昔の、小さな過ちでした。
彼女はそれを一人で抱えて必死で隠してきたんです。
僕が一番守りたかったものを、彼女もまた、守りたいと思っていたからです。
それを分かっていながら、ぼくはあばいた。
なぜだと思いますか。復讐ですよ。
自分を欺いた彼女に復讐したくて、僕は秘密をあばき、
結果、最も大事にしていたものを、粉々に破壊した。
彼女と僕と、本当に悪いのは、どちらだと思いますか」
(P161から引用)
自らの手で妻の過去の間違いを暴くことで自らの幸せを壊してしまった、
この経験があったからこそ海原は由加利を止めようとしたのです。
しかし由加利は突き進みます。
そこで行き着いた嘘を付いた理由は、
由加利を傷つけるものではなく、由加利を救うような理由だったのです。
桔平は由加利を愛していました。
愛していたがゆえに嘘を付いたのです。
必ずしも嘘が悪い事ではないという証明でもあります。
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