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自分の好きなこと、特にハロプロ関連の話題とテレビ番組の感想について多く書いています。
架空の街は小説の中で輝く
小説には、架空の世界を舞台にする作品、現実の世界を舞台にする作品、という風に大きく2種類があります。
さらに、現実の世界を舞台する作品には、架空の街が舞台の作品と、実在する街が舞台の作品があります。
実在の街を舞台とする作品には実際の風景を思い浮かべながら読むという楽しみがありますが、
架空の街を舞台とする作品には読者が想像の中で街を創りあげていく楽しみがあります。


そんな架空の街を舞台とする作品の書き手として有名なのが、海堂尊さんです。
海堂さんの作品のほとんどは「桜宮市」という架空の街を舞台としています。
デビュー作である『チームバチスタの栄光』以来、架空の街・桜宮市の姿は徐々に明らかになってきました。
そしてその作品を読めば読むほどに、そこに住む人々にまた会いたい、
という次なる海堂さん作品を読むことへの欲求が湧いてくるのです。

海堂さんの作品のなかで描かれる桜宮市は現在期を舞台にするだけにとどまらず、
『ブラックペアン1988』などでは過去期、『アクアマリンの神殿』などでは未来期を描いています。
その全体的な時代設定は1988年~2022年とされています。

海堂さんは、そのように過去・現在・未来を描くことで、桜宮市の姿を明らかにしてきたわけです。
架空の街である桜宮市を中心に舞台設定を共有し、作品間で登場人物がクロスオーバーするこの世界を、
書評家の東えりかさんは文庫版『ナイチンゲールの沈黙』の解説において「桜宮サーガ」と称しました。

このように海堂さんは、架空の街である桜宮市の世界観を築きあげたわけです。
そういった意味でいえば、海堂さんは架空の街を書くことで輝く作家だと呼ぶことが出来ます。


それとは逆に、実在の街を舞台とする作品を書くことで輝く作家がいます。
その作家の1人が、東直己さんです。
東さんの代表的なシリーズといえば「ススキノ探偵シリーズ」です。
北海道出身である東さんは、生まれ育った北海道を描くことで作品を輝かさせます。
特に、ススキノの情景やススキノで生きる人を描かせたら、ピカイチの作家だといえます。

そんな東さんも数多くの架空の街を舞台にした作品を描いています。
「ススキノ探偵シリーズ」の中の『探偵は吹雪の果てに』という作品がその1つです。
この作品では、主人公の探偵がかつての恋人に頼まれ、斗己誕町という街に届け物をすることになります。
この「斗己誕町」というのが架空の街です。

ただ、海堂さんが桜宮市をどこの都道府県にある街なのか明らかにしていないことに比べれば、
東さんの描く斗己誕町というのは北海道の田舎町だと明らかにしているので、情景を想像しやすいといえます。

この斗己誕町を通して東さんは、作品の中で北海道の田舎町の典型を描き出そうとしています。
そして東さんは、見事に北海道の田舎町に住む人の姿を描き出すことに成功しているのです。


架空の街を描いているという意味でこの2人の作家は同じかもしれませんが、
北海道ということを明らかにしながら架空の街を描く東さんと、
どこの都道府県に存在するかを明らかにしないで架空の街を描く海堂さんでは、
架空の街の意味合いも変わってくるのかもしれません。
しかし、どちらの架空の街も、小説の中でその存在感を示しています。

実在しない街の風、その街に住む人、その街の情景を感じさせることが出来るのは、
まさに小説ならでは特権といえるのではないでしょうか。
そして、その特権が存分に発揮されている小説というのは、我々を惹きつけてやむことがないのです。



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